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「こまごめ」を愛する人びと=「こまごめ人」が発行するこまごめ通信。こまごめ人お気に入りの人やお店、風景を紹介します。
今月号は「こまごめぐるぐる」企画第七弾。こまごめのお店を編集部が取材して、店主やオーナーの想いをお伝えします。今回は第六回の「なりきや」さん同様、昔から続く老舗「三木酒店」さんにインタビューしてきました!
こまごめぐるぐる vol.7 三木酒店
日本酒ののぼりの横には、ワインの樽やビール、泡盛、ラム、紹興酒……そして、なんとお味噌まで!
一歩足を踏み入れると、気になる商品が次々目に飛び込むこのお店は、もう百年近く駒込で営業する老舗の酒屋さん。霜降銀座と染井銀座、これまで二つの商店街の切れ目を明確に意識したことはなかったけれど、三木酒店があるのはこの切れ目のあたり。
お店を立ち上げたのは現在の店主・寛司さんの祖父である清造さん。関東大震災後に山梨から上京し、市電の運転手をしていたが、お酒好きが高じて自ら酒屋を開くことになったのが始まり。寛司さんは子どもの頃からお店の手伝いをしていましたが、本格的に働き始めたのは二十五歳頃。当時はPOSレジではなく、すべての商品の値段を覚えていたと言います。位置や広さは現在と変わりませんが、当時は木造で店先には昔ながらの酒屋らしい、様々な銘柄の金看板が並んでいたと言います。
商店街若手有志とともに西ヶ原・染井エリアの情報を紹介するじもつーMAP(地元通の情報紙)を発行するなど、商店街・地域とのつながりを大切にしながら、ユニークな発想でエリアを盛り上げてきた寛司さん。量こそ多くは飲まないものの、様々なお酒を味わうのが好きなのだそう。その探求心が、店のユニークで幅広い品ぞろえにつながっています。中でも、国産のお酒は生産者と直接話してこだわりや想いをくみ取った上で仕入れているのが特徴。
おすすめは店舗入口付近でも紹介している菱山中央醸造のワイン。地域のぶどう栽培農家が地域のために丁寧に作っているワインはラベルのないシンプルな佇まい。勝沼エリア以外で手に入るのは、実はここだけ⁉
その他に、限られたお店でしか入手できない小布施ワイナリーのワインも二十年近く前から取り扱っているなど、寛司さんの目利きと仕入れ力が光ります。万人に受ける定番は押さえつつ、しっかり“クセあり”や“尖った一本”を取り入れる、そんなセレクト力もまた、寛司さんらしさです。
商品選びも、もちろん気軽にご相談を。「どんな料理と合わせたいか教えていただけたら、ペアリングも提案しますし、お酒の背景にあるストーリーもお話しますよ」と寛司さん。
レジの前には、味噌樽に入ったお味噌が六種類。父の清一さんの代には倍以上の量を並べていたと言います。お酒だけでなく、味噌や醤油などの調味料も扱うのが、昔ながらの酒屋の姿。
銘柄とグラム数を伝えて、袋に包んでもらう、なんだか懐かしくてあたたかい光景。入れ物は、タッパーなどを持ち込んでもOK。
駒込の地に根差して百年。お酒を飲む人の数も、かつてに比べて少なくなり、今やお酒は“酔うため”ではなく“楽しむもの”に。そんな時代の中で、昔ながらの姿を大切にしながらも、変化にしなやかに寄り添い、堅実に営まれている姿勢が、結果として他にはない独自の魅力につながっているのだと思います。そんなお店が、この商店街に今もあることが何より嬉しい。
これからもふと立ち寄ってのぞく時間が楽しみです。
インタビュー・文・絵 ぬみぃ
三木酒店 定休日・水曜
東京都豊島区駒込三― 二九 ― 七
ゴメスのこまごめでおかいもの(4コマまんが) vol.70こまごめを案内するニャ④ moi mimi(モアミミ)さん

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