

「こまごめ」を愛する人びと=「こまごめ人」が発行するこまごめ通信。こまごめ人お気に入りの人やお店、風景を紹介します。
夏真っ盛り。今にも溶けだしそうな暑さですね。みなさん体調いかがでしょうか?
今月も引き続き、小説「駒込珈琲物語」の連載から始めます。今回は「こまごめ通信」お馴染みのキャラが登場するみたい!
駒込珈琲物語 第二回(一部抜粋)
駒込に引っ越してから三ヶ月が過ぎた。いつの間にか年が変わり、私もひとつ歳を重ねた。
せっかくのいい天気なので、外に出ることにした。さっき教えてくれたお店の情報を、マダムがLINEで送ってくれたので、リンク先をチェックする。MIDDLE GARDEN COFFEE STAND……ミドルガーデンコーヒースタンドか。お店のWebサイトはシンプルで落ち着いている。駅前の大きな通り、霜降銀座商店街の手前のいきなりステーキの角の小径を入ったところにあるみたい。まだまだ知らないお店があるんだな、と感心しながら足を進める。
足を進めるうちに、霜降銀座商店街の中のフタバ書店に寄ってから向かおうと思いつく。マダムからの言葉を反芻しているうちに、彼女が仕事を続ける中で、同じ街に住んでいる先輩として密かに尊敬し続けていたというドナルド・キーン先生のことを思い出して、先生の本を読んでみたくなったのだ。フタバ書店にはキーン先生のご本が揃っているから……というマダムの言葉がよみがえる。仕事の合間に、読んでみよう。そして仕事が終わったら、金魚亭の金魚たちにも挨拶しようと思いついて、明るい気持ちになった。
と、横を見ると、マンションを出てすぐの公園の脇を歩く私の隣を、ふっくらとした、毛並みのよい三毛猫が並んで歩いている。驚いて立ち止まると、三毛猫も立ち止まる。そして、三毛猫は私を見上げた。
「最近、見るようになった顔だニャ。元気にしてるかニャ?」

ふっくらとした、毛並みのよい三毛猫が、しゃべった。私は、目を丸くした。
「ああ! 失敬、失敬、自己紹介がまだだったニャ。おれはゴメス。このまちで生まれ育った、駒込っ子ニャ」
『ゴメス』と名乗った、恰幅のよい、いかした三毛猫は、ひげをぴんと伸ばした。そして、ゴメスは目を細めて、甘く可愛らしい声でニャーンと長く鳴いた。その愛らしい声に、肩の力が抜けた。まあ、いっか。細かいことは。人も猫もしゃべる街、それが駒込という街らしい。
小暮沙優(こぐれ さゆ)
ゴメスのこまごめでおかいもの(4コマまんが) vol.69 こまごめを案内するニャ③

発見! たぬき食堂
富士神社の帰りに見つけた、たぬき食堂。昭和二十四年創業の文字に惹かれ入ってみた。中は歴史ある風情で、長年煙にいぶされてきたであろう、いい色ののれんが目についた。BGMはジャズ風。お通しにはごまだれのかかった蒸し鶏で、それを食べたとき「ここは当たりだ……!」と思った。
あじわい鳥の炭火焼きや自家製梅酒に混ざってスペイン風焼き野菜や、から揚げに添えられたサルサソース、ラム肉の鉄板焼きなど、異国情緒のある料理が気になる。本棚には何冊も『地球の歩き方』が並ぶ。大将に聞くと「夏に一か月くらい“料理修行”と称して海外で過ごすのが楽しみ。今年はフィリピンの田舎へ行きます」とのこと。夏以降はフィリピン料理がメニューに加わるかも?
お店の歴史があり、なおかつ今も新しい味を開発し続けるたぬき食堂。大将のおばあさまが始められたお店で、長く地元で愛されてきた。本郷通りに都電が走っていた時の事や、大将が昭和小学校に通った思い出を聞いた。ビールと炭火焼きの鶏を食べながら、この歴史の一部になっていきたいな、また来たいと思ったひと時でした(すぐに再訪しました)。
織田博子(こまごめ在住のマンガ家)
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