駒込を愛する人びと「駒込人」が発行するこまごめ通信。こまごめ人お気に入りの人やお店、スポットをご紹介します。
駒込を愛する人びと「駒込人」が発行するこまごめ通信。駒込人お気に入りの人やお店、スポットを紹介します。
激動の二〇二〇年も幕を閉じようとしています。苦しい年だったと同時に、こまごめに滞在する時間が長くなり、より魅力を発見する年でもありました。
こまごめの異郷
「多国籍料理店の味は本格的でない」という持論を覆したのは「ナインスピアー(MAP①)」だった。提供される各国アジアン料理が、どれも抜群においしい。
産後なかなか外食できないでいたが、どーーーしてもナインスピアーのご飯が食べたくなった。生後二ヶ月のこどもを連れ、いざ参らん!と、夫とともにどきどきしながら暖簾をくぐる。
十八時、店内は盛況。恐る恐る「赤ちゃん一緒なんですけど……」と聞こうとした瞬間、「あー!お久しぶりです!生まれたんですか!どうぞどうぞ!」と、店主がにこやかに迎え入れてくれた。
あぁ、この人柄がお店の魅力のひとつでもあったなあと改めて思い出す。暗めの照明、異国情緒あふれる内装、おいしい食事と包容力ある店主。ここナインスピアーには多様な人が集う。
楽しげな二人組の会話がもれ聞こえてきた。片方の客は約束時刻より盛大に遅刻しての到着。間近に誕生日を迎える連れへのお祝いを忘れて、取りに戻ったことが遅刻の理由だった。用意していたのは成城アルプスのアップルパイ(なんとホール!)。二人では食べ切れないからと、店内にいた全員にお裾分けしてくれた。私ももれなく御相伴にあずかる。閉店した駒込アルプスをも思い出しながら、おいしくいただいた。
こんなハッピーハプニングがあるのが、ナインスピアーの日常。こまごめにある異郷の地では、今日もおもしろいことが起こっているはずです。
くれまちこ(駒込レベル中級ライター)
水路のごとく流れるご縁で結ばれる商店街
イニシエから続く時間軸のどこから霜降・染井銀座の歴史が始まったか。記録を辿れば谷田川のあんきょ暗渠化(一九三一年)が転換点だから、生きた目ん玉で拝めない時代まで遡らなければならない歴史をもつ。年端はかなりいっているほうだが、それでも生まれるきっかけさえ芽生えていない過去から延びてくる道。
滝乃寿し界隈の夜の闇になら往時に繋がる穴倉が現れる気配もないではないが、目を凝らしたって自分史にないものは憶測の域を出ることはない。
経済は下り専門の激流から抜け出せずにいても街の活気はマイペース、世間の荒波はどこ吹く風。噂話みたいに湧いては消える気まぐれな経済指標に翻弄されることなく、商店街は淡々と歩んでいる。
もちろん駒込にだって栄華の時代はあった。肩で風切るまやかしの任侠がドスを効かせて巻き上げる「みかじめ料」、余剰をかすめ盗られてもなおゆとりがあった甘い蜜に溢れた時代が。
推し量りようのないムカシから今に現れた商店街は、激流の時代を経てたゆたう平地にまで辿り着いたろうか。その脈々と流れる水流に乗ってZはbeyondZ(③)に引き継がれ、サンレモはレトロ・フィッシュ・カフェ(④)にかつての思い出の一ページを託した。
暮らしという川の流れは勢いを緩めながらも、川面の煌めきをバトンのようにつないで新旧を結び、今日に至っている。
ほら、あそこでも。
老齢の淑女が新しく始めた生け花の教室で、少女に戻った顔を破裂させた。孫ほどの先生の、なんと頼りがいのあることか。新旧はその順列を組み換えながら手に手を取って、街の息吹をつくりあげている。
ここに暮らす人々の命の源泉は心の奥の奥で息をし、目にはつかぬが確実に在る暗渠した水路のように、この土地に脈々と流れ続けている。
中村音音(ゴーストライター)
しもふりからプレゼント
最近あった、こま通っぽいできごと。
パリーシューズ(⑤)で娘の靴を買ったら福引券をもらった。息子に引いてもらったら特賞(たぶん一番いいやつ)でしもふり銀座の商品券を当てた!
「欲しいものを買おう」と言ったら、息子は「ラジコン」というので、「ラジコンはしもふり銀座に売ってないな〜」ってと言いつつ、pany(⑥)の前を通ったら店主の小林さんが顔を出し「おいしいメープルシロップのクッキーあるからおいで」と言われた。
入ったらちょうど欲しかったのとそっくりなニットがあり、値段を聞いたら当たった商品券と同じ値段。商品券を使ってそれを買い、息子へのお礼にラジコンを西友(⑦)で買って帰った。
娘は小さな靴、息子はラジコンとメープルシロップのクッキー、そして私は欲しかったニットを手にして帰宅した。いくつもの奇跡が重なった、商店街からの思わぬプレゼントでした。
織田博子(マンガ家)
こまごめニュース
十二月二十六日(土)RYOZAN PARK GRAND(⑧)にて、「こまごめ文化祭 vol.2」が開催されました。こまごめのエステサロンやワークショップ、パン屋さんやムガルカフェのビリヤニ、そして「こまごめビール」のお披露目会も。こまごめの盛り上がりを感じる会でした。
こまごめ通信とは
街を行きかうこまごめ人が、自分たちの好きな場所について静かに語る。こまごめへの愛をひっそり描く。
この街で生活する人たちの息遣いが感じられるような、そんなコミュニティペーパーです。一年分の記事をまとめた冊子「こまごめ通信本①」は、フタバ書店(⑩)さんで販売中(税込八八〇円)です。
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発行:こまごめ通信 編集部
編集:織田博子
校正:くれまちこ
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